この方は過去に多くの歯科医院そして大学病院の教授たちが治療してきたにもかかわらずうまく最後まで治療にたどりつかなかった。
初診の段階でこのようなひどい状況で来院され、私も何とかしてあげたいと思った。これほどにまでひどい仮歯が入った状況はなかなかない。仮歯が揺れるからといって歯茎にぐるぐるとワイヤーが巻かれめり込んでいた。歯茎からは膿がいたるところから噴出していた。
このような患者さんに対してはまずはゆっくりといままでの経過を伺いどのような治療をされてきたかを聞くことにしている。通常は治療の計画を立ててから歯を治していくが今回のケースはあまりにもひどかったのですぐに仮歯の修正にはいった。
私が重要視しているのはこの仮歯である。仮歯は最終的な被せ物の大きな参考となるのでここでは時間をかける事にしている。
患者さんへの治療説明には液晶モニターで患者さんの画像に直接重要なことを書き込むようにして患者さんに画像をプリントアウトし、そして自分も忘れないように記録をカルテにはさんでいる。
治療計画に患者さんが納得をしていただいた後に治療に入るようにしている。
仮歯にした後は保存不可能な歯は
抜歯となり
根の治療が不十分な部位は
根管治療を行い、同時に歯周病と
虫歯の治療を進めていく。ある程度、歯や歯茎の状態が改善したところで
インプラント治療に入っていく。
このように
インプラント治療だけで済むことは稀であり
インプラント治療だけ得意ということでは口全体をもとに戻すことは出来ない。私がいつもここで書いていることだ。トータルのバランスが大事であること。
インプラント治療はこのようなケースでは一番最後におこなわれることが多い。欠損部が
インプラントで回復されるまでにはほぼ2ヶ月かかり、このケースでは
インプラントの上部構造に仮歯を装着した。全ての歯が仮歯になった時点で上下の歯型をとり、最終的なセラミックや金属の被せ物をしていく。
最終的な被せものが仕上がってもここで終わりというわけにはいかない。この被せ物がうまく機能するかどうかを判断しなければいけないのでしばらくは仮づけにする必要がある。この期間は人にもよるが最低でも2〜4週間で長い方は永久仮づけにすることもある。
うまく機能してもこれで終わりではない。これからは一生、メインテナンスとなる。理想的には3ヶ月に1回の検診が必要である。