今日は朝から最終補綴物の装着の治療が続いた。朝1番の患者さんは5本のセラミッククラウンの装着。次の患者さんは7本の
ジルコニアの試適である。3番目の患者さんが今日お話する14本の
インプラント治療で2年間かかった患者さんである。
初診の段階では上顎の残存する歯の全てが重度の歯周病に侵されていて、上顎の前歯にしか
インプラント治療が出来ない状態であった。下顎は左右の臼歯部はグラグラな状態でありこちらも咬む機能はほとんどない状態である。こうした状態で私は最も確実な方法を選択した。患者さんのご希望は咬めなくてもまずは上顎から見た目を回復したいということだった。しかし、まずは右か左かどちらかが咬めなくては体が弱ってしまうことから上顎は全てを
抜歯して
義歯を装着し下顎はすぐに回復可能な左側の
インプラント治療からはじめた。
次に上顎の臼歯部は左側はソケットリフト法2本+前歯4本を行い左側を中心に早期回復をおこなった。右側は骨が全くない状態からサイナスリフト法で増骨し6ヶ月後に2本の
インプラント植立を予定した。
そして最後に右下の臼歯部に3本の
インプラントを植立して欠損部全てを回復した。
このようなケースであれば今ではもう少し早く回復させる方法はたくさんある。
抜歯即時で仮歯を入れる方法である。下顎に関しては健全な前歯を4本犠牲にすれば即時で6本の
インプラント植立で被せ物を装着できたであろう。
4本の歯を残すことに意義がある場合とない場合がある。少ない自分の歯を残したいという気持ちが患者さんの多くには存在する。その逆に持たない歯は全て即座に
抜歯を行い合理的に
インプラントを入れる考えもある。費用は前者の方が安い場合があり、治療期間も長くなるので説明次第では後者を選択する方もいるだろう。
石橋を叩いて渡るのは2年かける方法とも言える。一気に変化するのではなく徐々に
インプラントに変えていく。その間に患者さんも
インプラントのよさと自分の歯のありがたさを体験していく。ブラッシングもうまくなる。そのようなメリットも存在する。本来自分の歯よりも万能な人工物というものは存在しない。いくら説明をして合理的といえども患者さんは『歯を抜かれた』と思うだろう。
即時に
インプラントをいれて被せ物をすることにはある一定のリスクが存在する。文献や論文には即時に入れても入れなくても成功率は同じといった考えもあるがそのようなことはないと思う。患者さんの被せ物に対する慣れや咬む力加減が全くちがうことからいきなり口腔内環境が変化するとそれについていけない場合もある。
もし即時加重
インプラントが失敗すれば即座に
義歯に後戻りで通常の治癒期間よりも大幅に遅れる結果となってしまうだろう。
多少の時間がかかっても一番確実な方法を選択するべきだろう。今ならば1ヶ月あれば即時加重と同じ効果を得られて成功率も高いのだから急がば回れである。