今日は朝一番の患者様は開業以来からたまに通院されている若い女性の患者様である。この患者様のご両親には
インプラント治療を施し現在治療途中である。この患者様は特に大きな
トラブルはなく10年以上が経過していた。
しかし、当時
虫歯で詰め物をしたレジン樹脂は変色し脱落をしていた。私が歯科治療を始めてから15年が経過していて当初は当然のことながら保険治療が中心であった。歯科医師1年目の私は大学を出て、普通の歯科医師とは違う研修施設に入局した。大学病院でもなく開業医でもない当時では日本に2件ぐらいしかない歯科専門の研修施設IDA(国際デンタルアカデミー)にいた。ここでも保険治療以外に当時ではまだ周りの歯科医師はほとんど手を出すことはタブーとされた
インプラント治療、ラミネートべニア、ポーセレンインレー、オールセラミッククラウン、初代CERECを積極的に行っていた。
1年目から
インプラント治療を勉強する環境があったからこそ今があるのだろう。その当時の
インプラントを担当していたドクターは一田先生でありその後、現東京医科歯科大学の臨床教授の菅井先生である。菅井先生のもと
インプラントオペのアシストをしたことはいまでも鮮明に覚えている。また、
審美歯科担当は青山で開業されている中川先生であった。IDAの所長はすでにお亡くなりになられた保母須弥也先生であり、咬合学や歯科医院のマネージメントについて講義を受けていた。併設されていた
技工士の学校の校長は田村校長と現
ノーベルバイオケア社の武藤先生でである。そのさらにラボテックスクールの教員として
審美歯科で有名な行田先生とタッグを組んでいる小田中先生と町頭先生がいた。また、私のインストラクターは同じ世田谷で開業をしている江崎先生であった。
IDAでともに学んで他の歯科では真似のできないハイレベルの歯科治療を目指して向学心に燃えていた当時の仲間や先輩たちは歯科のトップに君臨し、いまの歯科業界を支えている。
少し、話が脱線したが10年以上前に詰めた詰めものであるレジン樹脂は耐久性がなく変色劣化をしている。そして金属の詰め物は錆びて変色をしている。その当時は経験もないのでただ
虫歯であれば保険制度のルールに従って詰め物をするだけであった。しかし、今は昔と違って多くの詰め物の種類がある。それだけ歯科の材料は進歩しているのに、昔ながらの耐久性や安全性に劣る材質を患者様のお口の中に詰めるということは一種の犯罪である。
私が保険治療を否定しているのはこうした長い臨床経験から述べていることである。保険制度の枠組み内で使用できる材質には耐久性や安全性に問題がある。10年前と同じ過ちをしないためには保険制度の枠組みから抜け出すしかないのだ。
歯科保険制度は実は歯科医師にとっても違う意味の保険制度である。われわれの歯科医師の生活を守る保険制度であり確実な安定した収入を得ることができる。
私はあえてこの保険制度を捨てて自費治療という方法を選択した。日本全国で自費治療だけ歯科治療を行っているクリニックはほとんどなく、ごく一握りであろう。それはどの歯科医師も自分の生活を安定させたいから、いい治療法とはかけ離れている保険治療を患者に無条件に提供しているのだ。
私は残り少ない歯科の人生の中でできるだけ理想に近い治療を提供したいと考えている。妥協をするならば、歯科の世界からは引退する気持ちで治療をしている。
当たって砕けろ!という精神でだめならばそれまで。成功すれば他の歯科医師のモデルケースとなるかもしれない。歯科の未来を拓くためには保険制度から脱却しなければいけないと思う。