歯科治療というのは極めれば極めるほど時間といろいろな材料をつかわなければいけない。毎年、いろいろな知識を得てそれを診療に取り入れているうち全く同じ治療でも全く違う材料を違って全く質の違う治療が可能になってきた。今回、リヒテンシュタインで得た知識は国内では教えてもらえないような接着の知識であった。国内でよいとされている材料も実は欠点があったり、もっとよい接着の方法があったり材料を変えるだけで質は大きく変わり、詰め物の持ちも変わることがわかった。そして良い材料を使うと材料代は高くなってしまう。しかし、歯の持ちを大きく左右する接着操作に妥協は許されないと思う。
レジン樹脂を
虫歯の歯につめるのは非常に簡単であると昔は思っていた。1番簡単に1日で即日終わらせることができて歯と同色であることから患者さんも喜ぶからだ。これは開業して数年間の考えである。しかし、ここ最近はかなり難しい操作が煩雑な治療であり手を抜くと後で自分に返ってくる治療法だと気づくようになった。
充填するレジン樹脂の材質はなにがいいか?
昔は一番安いレジンを使用→
グラディアダイレクト
歯の表面処理は何がいいか?
昔はワンオール→今はメガボンド
積層充填にしなければいけない?
昔は全部1発充填→今は3層ぐらいに分けて充填
コンタクトの調整が難しい
昔は大体→今はコンタクトを一度作ってから充填
色調合わせにも苦労する
昔はほとんどA3 1色盛り→今は2〜3色を混ぜることもある
光重合器とレジン樹脂の相性は?
昔はハロゲン光源でゆっくり40秒1面→今はLED光源で何方向からできるだけ長い間当てる
研磨はなにがいいか?
昔はホワイトポイントのみ→今は3種類で荒・中・ファイン丁寧に
形態はどうする?
昔はそのまま→いまは溝を掘る形にする
このようなことを突き詰めていくととても長持ちする詰め物が完成する。しかし、ひとつでも手を抜くとポロっととれてしまう。
保険治療はなにをやっても同じ治療費である。良い材料を使うと赤字になるので残念ながら低レベルなものとなってしまう。私が自費治療をする理由は質を追い求めて理想に近い形で治療したいからだ。
私のクリニックでは自費治療で最も接着力の高い材質に強度と審美性を兼ね備えたグラデイァダイレクトでレジン充填治療を行うようにしている。昔は5分で終えたレジン充填処置は今では30分かけている。かけるというよりはいろいろなステップを確実にこなすといつの間にか30分間は簡単に過ぎてしまう。今後さらに質を高めるためにラバーダム操作を追加していく予定であるがその分、治療費は高くなるだろう。