数年前からさまざまニュースで
インプラント治療における失敗の報道がなされている。眼科を例にとればレイシック治療での問題が発覚した。ごく基本の滅菌消毒操作を省いたために感染症が多発した事件は皆さまの記憶にも新しいと思う。歯科では
インプラント治療でいろいろな問題が報道された。5年ぐらい前に国内で起こった死亡事件から始まり、
インプラントの
トラブルや相談が起こっている。
なぜ、このような
トラブルが多く報道されるようになったか?
インプラント治療があまりに安易に計画性もないままに行われることや
インプラント治療に対する間違った知識から増加している。
数年前におきた死亡事故は通常では行われない方法での
インプラント植立法が原因でさらに自分の勘を頼りにした自分の技術を過信したための事故であった。数万本もの
インプラント経験を持ちながら間違った方向への植立で動脈を傷つけ出血から舌が膨れて窒息死であった。
名古屋の
インプラント使いまわし事件も常識では考えられない。抜けた
インプラントを再度
使いまわしをして植立してもうまく骨と結合しないことは明白である。また、滅菌消毒の概念が全く抜けている。医療行為をするものとしてはごく当たり前のことをやっていない。
インプラント治療の契約の問題もクローズドUPしている。どんな治療も契約治療であり医師はその医療行為に対してしっかりと説明をする必要性がある。車を買う時に説明を受けないで購入する人はまずいないと思う。
いまのインターネットは情報が錯綜していて、どれを信用していいかわからなくなっている。国民が政治を信じていないような現象が歯科の世界にも起こっていると思う。
先日、食べログが偽装で上位に表示させるようにしているという行為は歯科業界でも当たり前のように行われている。私も何をネットに書き込めば信じて頂けるか真剣に考えるようになった。
それではどのようにして安全な
インプラント治療をおこなっている歯科医院を探せばいいか?
われわれの出来ることは自分たちの行ってきた治療について成功したことも失敗したことも書くことだと思う。そして正しいことをお伝えしていくしかないと思う。
午前中にいらした私のクリニックでおこなった
インプラント治療の患者さまのエピソードをひとつ紹介しよう。
10年以上前に
インプラント治療を受けた。7〜8年は問題がおこらずに経過していいたが、ある時期から少しずつ
インプラント周囲炎が進行し残念ではあったが抜け落ちしてしまった。いろいろな原因が考えられた。それからしばらくは部分
義歯をお使いになっていた。患者さまは
義歯を選択された。1年がすぎ隣の歯がぐらぐらになった。2年が過ぎそのぐらぐらした歯を
抜歯して新しい
義歯を作りなおした。3年が経過してその後方の歯がぐらいついてきた。患者さまは最終的に再度
インプラント治療を行うことを決断された。結局のところ
義歯より経験的に
インプラント治療の方がよいことを患者さまが判断したということだろう。
インプラント治療の最大の利点は歯を増やすことができること。歯を増やすことは欠損周囲の歯を守ることにもなる。欠損を回復すると同時に口の中の咬合力を分散させることができる唯一の治療法である。
義歯は隣の歯にばねを掛けることでその歯の寿命を短くしてしまう。ブリッジは問題のない歯を削り寿命を短くしてしまう。
インプラント治療はやりっぱなしがよくない。噛めるようになって安心してはいけない。どしてその歯が失われたのかを考えてこれからはもっと注意して口腔内のメンテナンス=
予防に努めるべきだ。
インプラント治療の始まりはメンテナンスの始まりともいえる。
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