10年間の
インプラントデータ以前の20年間の
インプラントデータが出せれば一番いいのだがしっかりとデータ記録し始めたのが平成16年4月からなのではっきりとはしないところがある。ここ最近3年間は
抜歯即時埋入やサイナスリフト、あまりにヘビーな
症例は患者さまにどれぐらいのリスクがあるのかを話、糖尿病や喫煙者も成功率が落ちることを説明し、保存できる歯は徹底的に残すスタンスに変えてきた。そうなると厳選された
症例だけが残り、急いでやってほしいとかいろいろと理想と違うやり方を希望される患者は自然といなくなっていく。結果として1本も失敗のない3年が経過している。さらに歯周病や
虫歯のリスク評価を行って口腔内環境を最低でも2か月かかて改善された患者にだけ
インプラント植立をおこなっているので当然のごとく成功率や生存率は上がってくることが予想される。
10年前の入れ食い状態の
インプラントバブル期では1カ月ほとんど毎日のようにオペをしていた。朝から晩まで
インプラントという時期があったから今があるのだと思う。いろいろな経験をさせて頂いたことから一番喜ばれる
インプラント治療はリスクを冒さないこと、安全に安心にがいいのではないかという結論に達している。
周りが即時荷重だとかall on 4だとかガイデッドサージェリーでワンディトリートメントだとか骨の移植をやればやるほど失敗するリスクが上がっていく。
なるべく骨造成をしないで短期間に安全に腫れず痛まず費用があまりかからずがいいはずだ。
インプラント治療がなければ欠損補綴はとても複雑な
義歯もしくはいずれ問題がでるであろうブリッジ治療で健全な歯を犠牲にしていくことになる。なくてはならない治療ではあるがなんでもかんでも
インプラント治療というのも問題がある。
どこかの歯科医院でこの歯は持たないから
インプラントですと言われた歯を何本も修復処置で助けることができている。自分の治療のバリエーションが豊富であれば治療の幅が広がりいろいろな提案を患者さんにすることができる。
矯正治療しかできないドクターは歯を動かして治そうとする。補綴処置しかできないドクターは歯を削って被せて治そうとするだろう。
インプラントだけというドクターは無理やり抜こうとするだろう。
根管治療が好きな先生は何が何でも保存してやろうとする。
これでは患者さんのためには一切ならないと思う。4つの治療が完璧にこなせるならばどれでもいけるのだから患者のニーズに合わせて使い分けもしくは2つの治療を組み合わせて治療を進めることができる。これが私の理想の歯科治療である。ここに
予防の概念が組み合わさり、材料学の知識と咬合の知識が融合して最高の治療となる。その上に行くには痛みや苦痛を極力感じさせない低侵襲の処置をしていくこと。
インプラント治療をおこなうにはあらゆる治療法を理解してその中から選択していくべきだと思う。
私がここ3年は
予防歯科に没頭をして
インプラント治療をやめたと思っている方もいるようだがそれは大きな間違いである。自分の治療の幅を広げるこの数年は非常に有意義であった。歯医者の原点にもどり患者利益の治療を考えた末の行動である。ざまざまな経験、成功と失敗から科学的
根拠に基づき技術的にもレベルアップしてきた。マイクロスコープの導入がレベルアップの原動力となっている。小さな歯を裸眼でみても細かな状態は見落としてしまいがちだ。小さな
虫歯も真剣に治療をしていく。
インプラント治療にならないようにすることが患者利益である。自分の天然の歯に勝る人工物はないはずだ。天然の歯を徹底して守る。それでも守れなかったときに
インプラント治療で治すというスタンスが患者のためである。人間の歯はうまく持たせれば自分の寿命以上に持つはずで、
インプラントが平均寿命を86歳(女性)を上回ったというデータは一切ない。今のところ
ストローマンインプラントのTPS表面のもので20年89%の生存率というのが一番の正確な長期データである。まだ30年とか40年データは一切存在していない。20年間で生涯を終える人ならば
インプラントは最善の治療になるかもしれない。