ブローネマルク先生は歯科の
インプラント治療の基礎を作り、骨の内部に純チタンを入れると骨結合を起こすことを偶然にも発見し、それを歯科に応用することを考えた。長年の研究から臨床応用し、チタン
インプラントを世の中に浸透させた。もっとも古いチタン
インプラントは50年近い歴史のあるブローネマルク
インプラントから始まった。今回そのの開発者であるブローネマルク先生がお亡くなりになった。歯科を大きく発展させ、世界中の歯を失った患者を
インプラント治療で救ってきた功績はノーベル賞に値すると思う。
23年前にさかのぼるが、大学卒業1年目の私も初めて扱った
インプラントは機械研磨加工のブローネマルク
インプラントであった。その当時は研修会に参加しなければ製品を購入することができないほどに厳格化されていたことを記憶している。ノーベルファルマ社の時代である。かたやその当時の
ストローマンインプラントはITI
インプラントとネーミングされ、ボーンフィットという世界初のラフサーフェス
インプラントであった。
ここにIMZ
インプラントと呼ばれるIMC(インナークッション機構をアバットメントに内蔵した)
インプラントが存在し、歯科の
インプラントはこの3つ巴の様相であった。
その後IMZは市場から消えていった。
現在のブローネマルクシステムは
ノーベルバイオケア社で新たにタイユナイトとと呼ばれるラフサーフェスとなって生まれ変わった。
現在の
ストローマンインプラントはその当時から同じ形状のまま進化を遂げ初代TPS、から現在では3代目のSLActiveラフサーフェスに変わっている。
私が思うに、いまだに初代のブローネマルク
インプラント(機械研磨加工)のものは長期的に生存していて全く問題が起きていないケースがほとんどである。これは次に登場したタイユナイトよりも性能がよかったということなのだろう。清掃性を重視しながらその当時は高床式のボーンアンカードフルブリッジが主流であった。とても理にかなった方法だったと思う。
インプラント治療が世界に普及し、様々なテクニックや材料が開発され、審美性や治癒期間の短縮、骨のない場所にも骨を作る技術、即時荷重で即日咬めるなどあらゆるケースにも対応できるようになっている。そしてさまざまなメーカーが絡んで商業化してきた結果としてさまざまな
トラブルも生むようになってきたことは間違いない。
インプラント治療の基本は咬合機能を回復することと長期的に咬合機能を失わないようにすることであったはず。ブローネマルク先生はこのことをよく理解していたと思う。
我々もたまには原点に返ってみる必要があるのではないだろうか。