ITI Congress Japan 総括
今回、ITI Congress Japanが新宿京王プラザホテルで2日間にわたっておこなわれた。私もこの世界的な
インプラント治療のスタディーグループITIメンバーであり、20年前からITIに参加して、さまざまな
インプラントの最新知識を学んできた。ワールドシンポジウムにも過去5回以上は参加してきた。国内では2年に1回の開催が常であったが今後は3年に1回になるようだ。ITI(インターナショナルティームオブ
インプラント)といえばベルン大学のブーザー教授とジュネーブ大学のベルザー教授のコンビが中心になってこのITIを牽引してきたことを思い出す。外科のブーザーと補綴のベルザーさらに
技工士のシューネンベルガーがタイアップして素晴らしい
症例や文献提示、最新の科学的
根拠に基づいた方法が提示されてきた。
すべてはエビデンスベースという点で開発されてきた
ストローマンインプラントも最近では商業化されてきた感じがある。エビデンスだけでは売れないのだろうか?こんな流れが今年のITI Congress Japanでは大きく感じられた。少し残念な気持ちと少し新鮮な感じが入り乱れた学会となった。今までは
ストローマンインプラントユーザーだけの学会という感じが今年からは元ノーベル
インプラント派閥も入り乱れてエビデンスベースが残念ながら崩れてしまったように思う。たぶんこのノーベル派閥の先生方は
ストローマンインプラントを使い始めてまだ3年にも満たないと思う。ITIに参加してきたことがないメンバーだからエビデンスの話ができないのだろう。それとされても説得力がない。そういう先生方が本来のITIで語られるべきエビデンスベースの話が置き去りにされ自分のテクニックだとか
症例のすごさを競う場になってしまったことは残念だ。テクニックの話ならばその先生が開催している研修会に参加すればいいだけのことだと思う。
プログラム構成にも少し問題を感じた。はるか遠方海外からわざわざいらしたITIフェローの最も聞かせたいエビデンスベースの話が台無しだった。2日目のコクラン先生の話の内容は
ストローマンインプラントの基礎ベース表面性状の話であり、ITIコングレスの最初に持ってくるべき内容だと思う。その最も重要な内容の講義が一番会場に人がいないという寂しい結果となってしまった。
ストローマンの社長がもともとノーベルの社長だからこのような人選になってしまったことは容易に想像がつく。やはり場違いの人選がこのような結果を生んでしまったと思う。
ひとりひとりの演者のスキルはとても高いことはわかるが統一性がない。こういう状態が
ストローマン関連の講義に登場し始めると3年後の会場の入りはもっと少なくなることが予想される。
さて、2日間をほとんどメイン会場で過ごしてとても興味深かったのは野坂先生の上顎洞内のサイナスリフト後の
CT画像の経時的変化についてであろう。このような話はいままで聞いたことがない内容でとても勉強になった。
あとは内容的には梅原先生のデジタル化で今後どのようなことが変わっていくかという話もよかった。審美については小濱先生と片岡先生のきれいな
症例提示であろうか。
エビデンスベースの話では最後のコクラン先生のSLActiveについてのさまざまな文献提示
(SLActiveの開発過程、SALctiveの優位性、成功率と生存率の高さについて、他社メーカー
インプラントのロスト率の比較、ロキソリッド
インプラントの優位性などとても興味深いものだった)
、基本に忠実なマーティン先生の話はSAC分類の話は
インプラントを習い始めた先生方にはとてもいい講演に思えた。「長期
症例に学ぶ」のメイン会場とは違う会場の話が聞けなかったのが残念ではあるがあとから動画をPCで聞けるようなので聞き直そうと思う。
講演以外では懐かしい先生たちと再会できて1日目の懇親会がとてもよかったと思う。